RIKUO & PIANO 2 - リクオ Official

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RIKUO & PIANO 2 / リクオ

ローリング・ピアノマン・リクオの完全ピアノ弾き語りアルバム。

ピアノ弾き語りアルバムとしては約11年振り。コロナ禍でのローカル発信を意識して、リクオが今暮らす京都にて、地元の人脈を生かしながら制作。
忌野清志郎の訳詞による「イマジン」「満月の夕」など、リクオ・テイストに満ちた名曲カヴァー4曲を含む珠玉の11曲。

リクオ『リクオ&ピアノ2』Hello Records(HR-009) ¥3,080(税込)
2021年9月10日(金)一般発売
リクオ・オンラインショップ「Hello Records shop(BASE)」でも販売中。
https://rikuoshop.thebase.in/

【収録曲】 1)「イマジン 」 詞曲:ジョン・レノン&オノ・ヨーコ 日本語詞:忌野清志郎
2)「友達でなくても」 詞曲:リクオ
3)「新しい町」 詞曲:下田卓
4)「短編映画」 詞曲:リクオ
5)「実験4号」 詞曲:大木温之
6)「バータイム・ブルース」 詞曲:リクオ
7)「ランブリンマン」 詞曲:リクオ
8)「また会えてよかった」 詞曲:リクオ
9)「かけがえのない日々」 詞曲:リクオ
10)「満月の夕」 詞:中川敬 曲 中川敬&山口洋
11)「君を想うとき」 詞曲:リクオ

Produced by Rikuo
Vocal & Piano Rikuo
Recorded, Mixed by Daisuke Koizumi(studio SIMPO) Mastered by Kotetsu Toru
Recorded at Anne Shirley, studio SIMPO
Mixed at studio SIMPO
Mastered at JVC Mastering Center Daikanyama Studio Art Directed by Naoto Kobayashi
Designed by Toshiyuki Nakaie
Photographed by Kuniyuki Ikarashi

[ アルバム解説 ]

LINER NOTES 内本順一(音楽ライター) 東日本大震災の前年の1月にリリースされたピアノ弾き語りアルバム『リクオ & ピアノ』から11年半。かつてないほど困難なこの時代に、独演にて制作されたリクオの新しいアルバムが、『リクオ & ピアノ 2』である。

ひとりで過ごす時間が前より増えた。ひとりで考える時間が前より増えた。社会の情勢を見て、自分に向き合って、自分はどうなんだと問いかけて、会えなくなった誰かのことを考えて、今は何をすべきで何をすべきじゃないのかと考えて……。そういう時間が前より増えた。多くの人がそうだろう。バンドマンも、サラリーマンも。フリーランスの人も、組織に属する人も。リクオもそうで、それがこのアルバム制作の動機のひとつとなったようだ。

「思うようにツアーに出れなくなり、酒場へも通えず、考えさせられる時間が増えるなかで、自分がこれまで何を大切にしてきたのか、誰や何に支えられてきたのかを、より強く感じるようになりました。自分にとってコロナ禍は、自身への問いかけと確認、そして気づきの時間となっています。この作品はそんな日々のなかで生まれました」(リクオ)

「ひとり」から始まる(始める)ことの強さと柔軟さを感じるアルバムだ。ひとりの表現の強さと柔軟さ。ひとりの行動の力と柔軟さ。今、リクオから届いたこのCDを手にしてみて、聴いてみて、まず思うのはそれだ。

リクオのピアノと歌声だけという、この上ないミニマルさだが、想像力を無限に掻き立てる。いつか行った町、いつか見た景色、いつか出会った人、何度も会っていたけれどしばらく会えずにいる人、何度か行ったけれどしばらく行けずにいる町や店。聴けばそれらが頭に浮かんでくる。リクオはリクオにとってのそれらを思いながら歌い、聴いているあなたや私は、あなたや私にとってのそれらを思い浮かべることになる。

そういうCDを、流通会社を介しての一般発売(9月10日)に先駆け、リクオはまず自主のオンラインショップにて予約受付を行ない、自分で封に入れて、宛名を書いて、発送。「ひとりの表現の強さと柔軟さ」に並べて「ひとりの行動の力と柔軟さ」と書いたのは、例えばそういうことだ。

出口の一向に見えてこないコロナ禍の今、大きなプロジェクト、大きな表現は、なかなか難しいし、響きづらい面がある。それよりもこうした「ひとり」から始まる親密な表現の仕方と届け方が今に合っているように思うし、何より嬉しい。音楽が、歌が、送り手であるリクオから聴き手である自分に直接届いている実感を持てるからだ。

自分で動く。自分から動く。ずっとそうしてきたようにリクオは今回もそうしているわけだけれど、それはこの国の総理が説く「まずは自分で」という閉ざされた理念とは根本的に違って、むしろ真逆だ(言うまでもない)。誰かがいるから動けるのだし、誰かを思うから動くのだ。

「君を呼ぶよ 友達でなくてもいい」(「友達でなくても」)。「Hey Babe 今夜だけ 貸しておくれよ 君の肩を お互い様さ Tonight」(「バータイム・ブルース」)。「今は想うとき 君は何してるかな」(「君を想うとき」)。全部そう。「夢かもしれない でも夢を見てるのは 君一人じゃない 仲間がいるのさ」。忌野清志郎が日本語詞をつけた「イマジン」を歌うこともそう。全部繋がっている。リクオが今暮らす京都で「君」を想い、ひとりじゃないことを思い、実際にミキサーとかアートディレクターとかデザイナーといったいろんな仲間の手を借りてCDを作り、そうしてリクオは「誰かの心に寄り添うことができれば」と願って動いているわけだ。

内容について書いておこう。11年半前の『リクオ & ピアノ』は全12曲入りのカヴァー・アルバムだった(最後の「胸が痛いよ」はリクオと忌野清志郎による共作曲のセルフ・カヴァー)。それに対して今回の『リクオ & ピアノ 2』は4曲がカヴァーで、7曲が自身の手によるオリジナル曲だ。そしてその11曲は、述べたように、ひとつの思いで繋がっている。カヴァー曲も含め、2020年・2021年のリクオの切実な思いや願いが歌われている。コロナ禍の今、歌わずにはいられなかったのであろう歌が11曲並んでいる。そういった意味で、11年半前の『リクオ & ピアノ』とは少しばかり性質の異なる作品だ。

カヴァーは、まず「イマジン」。言うまでもなくオリジナルはジョン・レノンの楽曲だが、ここでは忌野清志郎が日本語詞をつけたものが歌われている。清志郎の歌ったものはRCサクセションの1988年発表作『COVERS』に収録。ライブでも何度か取り上げられたが、とりわけ2007年に日本武道館で開催された『ジョン・レノン スーパー・ライブ』での歌唱が、日本語詞の「マザー」と共に圧倒的だった。リクオのここでのものは、イントロのピアノから静かに、グッと引き込まれる。

「新しい町」はカンザスシティバンドの曲で、ヴォーカル兼トランペットのバンド・リーダー下田卓が作詞作曲。震災があって書かれた曲というわけではないが、2011年の震災後の希望の歌としてギターパンダやT字路sや夜のストレンジャーズや中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)らがライブでカヴァーするようになり、カンザスシティバンドも2012年に配信リリースした。「希望と絶望を繰り返し、新しい暮らしが始まる」。ローリング・ピアノマンの呼び名に相応しいプレイと共に、リクオの歌が暗い2021年を明るく弾ませる。

「実験4号」は、Theピーズが1997年に発表した7thアルバム『リハビリ中断』の収録曲で、詞曲はハルこと大木温之。小説家の伊坂幸太郎と映画監督の山下敦弘が2008年に共著で発表した短編小説『実験4号』は、Theピーズの同曲へのオマージュ的な作品だった。元はロックナンバーだが、リクオはスローにしてしっとりとカヴァー。忌野清志郎にも匹敵するハルの詩人としての個性・天才性が、それによって尚更際立つ。

「満月の夕」はソウル・フラワー・ユニオンの中川敬とヒートウェイヴの山口洋が共作した楽曲。1995年1月に起きた阪神・淡路大震災に向き合おうとする被災地の人々の姿が歌い込まれた名曲だ。ヒートウェイヴ版とソウル・フラワー・ユニオン版、それぞれがシングルでリリースされているほか、ガガガSP、沢知恵、二階堂和美、BRAHMANらがカヴァー(ライブではさらに多くの歌手がカヴァーしている)。リクオは中川敬や山口洋とのツアーで、そしてそれ以外でも何度なくこの曲を伴奏してきたが、この2年くらいは自身でも歌うようになった。今回は待望の初録音と言えるだろう。

カヴァーを歌うこと。それは誰でもできることだし、誰でもしていいことだが、その曲の歌詞を深く理解し、咀嚼し、それを自分の思いとして落とし込んだものとそうじゃないものとでは、響いてくるものが全然違う。リクオはここでの4曲を自分の思いや願いとして歌っており、よって自身のオリジナル曲との温度差がない。「リクオの歌」になっている。

自身の手によるオリジナル曲は7曲。このうち「ランブリンマン」は2014年リリースのアルバム『HOBO HOUSE』に収録されていたライブ定番曲だ。リクオの「ヘヘイヘーイ」の声のあと、それに応えて「ヘヘイヘーイ」と返すライブハウスの観客みんなの声が脳内で再生される。

ほかの6曲は初録音。最近のライブで歌われていた曲群だ。“非日常的な日常“をしばらく過ごしているリクオや私たちが、ふと思うこと、思い出すこと、気づくこと。そういうことが決して多すぎたりしない数の言葉で歌われている。それはリクオがもう一度心に決めたことだったり、願いだったり、あるいは祈りだったりするもので、それが私たちにとってのそれとシンクロする。

ピアノと歌だけでありながら、空間が感じられる。時代の空気、そして観客の空気もそこから感じられるようだ。リクオがここにいる。私たちもここにいる。距離が離れていても、心で、音楽で、繋がることができている。そう思えることが嬉しいアルバムだ。



《 リクオによる曲解説 》

1、「イマジン 」 詞曲:ジョン・レノン&オノ・ヨーコ 日本語詞:忌野清志郎
曲のサビ以外のコード進行を、オリジナルとは大胆に変えて、「緊張」や「内省」を感じさせるアレンジを意識しました。穏やかならざる社会状況の影響もあると思います。自分にとっての「イマジン」は、過信や独善、傲慢、利己を乗り越えてゆくための「想像力」について語られた歌です。

2、「友達でなくても」 詞曲:リクオ
曲を書き始めた当初は、"You've Got a Friend"や"Lean on me"を意識した、自分なりの友達ソングに仕上げるつもりでしたが、 最終的には、それらの曲とは別視点の価値観を提案するような歌詞内容になりました。
2年以上前に書き下ろした曲ですが、コロナ禍を経て歌の響きが変わった気がします。
友達や身内、国や民族という単位を越えた多様な繋がりの中で自分達が生かされていることを実感できるかどうかが、この世界的なパンデミックを乗り越えてゆくための一つの鍵になるように思います。

3、「新しい町」 詞曲:下田卓
'11年の東日本大震災以降、T字路s、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、ギターパンダ他多くのミュージシャンにカヴァーされ続けているナンバーで、自分もライブのレパートリーにさせてもらってます。
震災後やコロナ収束後の町づくりが、この歌の歌詞に出てくる「戒め」や「祈り」を忘れない「新しい町」であることを願ってます。
「再生」への願いと希望は、近年の自分の表現テーマの一つだと思います。

4、「短編映画」 詞曲:リクオ
50代以前には書くことのなかった歌詞です。やはりそれなりに年齢を重ねたんだと思います。
長く曲作りを続ける中で、時代や年代によって歌詞も曲調もかなり変化してきました。その変化をこれからも受け入れてゆこうと思います。
ここから3曲の並びは、酒場で飲みながら演奏したくなる曲をイメージしました。実際に、飲みながらのレコーディングでした。

5、「実験4号」 詞曲:大木温之
作者であるピーズのハルくんとの共演で、この曲を何度か一緒に演奏させてもらう機会があり、いつかカヴァーさせてもらいたいと思ってました。人間のどうしようもなさを受け入れてくれる、自分にとっての最高のブルースナンバーです。
原曲のガレージ・ロック調からガラリと変え、場末のピアノマンをイメージしてアレンジしました。ビリー・ジョエル"New York State of Mind"からのピアノ・フレーズを引用してます。

6、「バータイム・ブルース」 詞曲:リクオ
酔いに身をゆだねながらの一発録りです。歌とピアノが一体化したテイクが録れたと思います。ピアノも酔ってます。
酒場は、自分の主要なライブ活動の場であると同時に、プライベートにおいても大切な社交場です。誰かにとっては不要不急の場所でも、自分にとっては生きるために必要な愛すべき場所なんです。

7、「ランブリンマン」 詞曲:リクオ
ライブの定番曲です。お客さんとコール&レスポンスを交わしながら演奏している気分で録音しました。
ピアノ・アレンジは、「新しい町」と同様、自分のルーツの一つであるニューオーリンズ・ピアノのスタイルをフィーチャーしました。
旅をテーマにしたオリジナル曲が多いのは、ツアー暮らしが長い影響だと思います。
コロナ禍は思うように長いツアーに出れなくなったので、最近は旅の開放感が懐かしくなります。

8、「また会えてよかった」 詞曲:リクオ
旅先で出会った人達のことを想って書いた曲です。
ツアー暮らしは楽しいし好きだけれど、ふと旅の空の下で、ツアーに埋没している自分に気付いて、世の中から取り残されてゆくような、何となくやりきれない気持ちになる瞬間があります。そんな思いも歌に込めました。

9、「かけがえのない日々」 詞曲:リクオ
曲に鎮魂歌のような響きがあるのは、この曲を書いた時期がお盆だったことも影響してるかもしれません。
年を重ねて、あの世とこの世の距離が次第に近づいてきたような感覚があります。もう会えない人や過去の記憶と共に今を生きている自分に気づきます。

10、「満月の夕」 詞:中川敬 曲:中川敬&山口洋
この曲の作者の一人である中川敬が所属するバンド、ソウル・フラワー・ユニオンは、'95年の阪神淡路大震災の数週間後から被災地の避難所などに出向き、チンドンスタイルで演奏するボランティア活動を始めました。「満月の夕」 は、そういった現場体験をもとに生まれた曲です。
当時、大阪で暮らしていた自分は、時々、彼らの被災地での演奏活動に参加させてもらっていたので、この曲が生まれる経緯を近い場所で見ていました。
作者である中川敬、山口洋とはそれぞれと、日本中を一緒にツアーして回った間柄です。オリジナル曲以外で、自分が最も多く伴奏した曲は、間違いなく「満月の夕」だと思います。

11、「君を想うとき」 詞曲:リクオ
昨年の4月、新型コロナウイルスの感染が拡大してすべてのライブスケジュールが中止か延期となり、ずっと部屋に待機していた時期に、誰かに手紙を送るような気持ちで書いた曲です。
この状況下でよかった思える一つは、「想う時間」が増えたことです。自分が何を大切にしてきたのか、何や誰に支えられてきたのかを確かめながら、これからの生き方や社会について考える時間を持てたことは、今後の自分の活動に間違いなく反映されてゆくだろうと思います。